大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和32(オ)582 判決

主 文

原判決を破棄し、本件を福岡高等裁判所に差し戻す。

理 由

上告代理人弁護士村田左文の上告理由について。

原判決は、挙示の証拠を綜合すると、その頃被控訴人(原告、被上告人)が新円

に切換後の経済状勢の激変等によつて、本件売買代金の支払に窮していたのを当時

まだ被控訴人と懇意の間柄であつた控訴人(被告、上告人)が同情し被控訴人の懇

願を容れ、被控訴人主張の日時に本件残代金債務について被控訴人主張の約旨(弁

済期の定めなく、利息一ケ月につき金千円、利息支払期毎月末)の準消費貸借契約

が成立するに至つたこと、および、本件売買について、控訴人側から被控訴人に対

し本件不動産につき買戻の交渉があつたが遂に纒まらなかつた事実はあるが、控訴

人が主張するような債務不履行を理由として契約解除の意思表示がなされたことも、

本件当事者間に合意解除のあつたこともないことその他原判示の事実を認めること

ができる旨判示したことは、所論のとおりである。しかし、被上告人が本件代金の

支払期限たる昭和二一年六月三〇日までに代金の内六万円を支払つたに止まり全代

金を完済するに至らなかつたことは、被上告人の認めるところであり、また、本件

売買代金の支払期限は、昭和二〇年中に一〇万円、二一年六月末までに一〇万円と

明確に定められていたことは、当事者間に争なきところであり、かつ、上告人先代

が昭和二一年三月頃代金の支払を督促していたことは、弁論の全趣旨に照し明白な

ところである。されば、本件売買代金の大部分である金一四万円(本件売買代金の

支払期限は前記のごとく定められており、新円切換は昭和二一年三月であることは

顕著な事実であるから、少くとも内四万円を支払わなかつたことについては、原判

決のいう新円に切換後の経済状勢の激変によるものでないこと明らかである。)に

つき被上告人主張のごとき弁済期の定めなき準消費貸借契約が成立し、従つて、本

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件売買残代金の支払を無期限に延期するがごとき契約をするには特段の事情がある

ことを要すること取引の通念に照し疑を容れないものといわなければならない。し

かるに、原判決は、前示のごとく単に同情した等判示しただけで何等首肯するに足

りる理由を示すことなくかかる契約の成立を認定したのは、審理不尽による理由不

備の違法あるに帰するものというべきである。

以上被上告人主張の準消費貸借契約の成立をたやすく肯認できないとすると、原

判決の甲二号証の記載事項に関する原判示の事実認定もたやすく肯認し難く、ひい

て上告人主張の合意解約等に関する証拠の取捨判断等の当否にも影響を及ぼすもの

と認められるから、論旨はその理由あるに帰し、原判決は結局破棄を免れない。

よつて、民訴四〇七条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 高 木 常 七

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